丸山リハビリテーション診療所 新潟漢方研究所

東洋医学的未病診断

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丸山所長の今月のメッセージ

2018年9月

シリーズ4 医の話(その13’)医とメディア 追記

 もう10数年前の事だが、女子高校生の患者さんが受診した。訴えは生理が来なくなった、髪の毛が抜ける、身体がだるい等々だった。色々と問診してみると、薬局で「防風通聖散」という漢方エキス剤を飲み始めて2ヵ月位経ってから症状が現れたらしい。その他の日常生活の送り方に変わったことや、新たに取り組んだことも無い。
「何故? そんな薬を飲み始めたの?」
「やせたかったから…」
 女子中高生向けの雑誌で、ある読者モデルがその漢方を飲んで激ヤセしたという写真と記事が載り、評判になったとのこと。決して肥満体型でもないのに、全国的に若い女子達が薬局に殺到したらしい。当然、その薬の薬効と適応の説明をし、即刻、飲むのをやめてもらった。結果、1ヵ月程で症状は軽快した。
 その後、私は帰宅が少し早い日があり、通勤途上にある薬局に寄ってみた。いくつものメーカーの防風通聖散エキス剤が、店舗に入ってすぐの目立つ棚に置いてあった。品切れのものもあり、1ヵ月分が3000円~4000円程度の価格だった。これなら何とかお小使いで買える値段だ。
 何てこった!! 成長期には決して飲んではいけない漢方なのに…。私が処方する症例は、原則として中年以降でBMI30以上、高血圧と高脂血症と糖尿病の3つの内、2つ以上の診断がついており、東洋医学的診立てで、実証で陽の体質の患者さん達である。
 しばらくして、ネット上で防風通聖散の弊害等の情報が知られるようになり、ブームは下火になっていった。雑誌社や薬局の取り扱い方に疑問を感じるが、漢方処方の臨床経験が無い人達にとっては、その後の配慮などできるはずもないし、医療考証をしようという発想も無いのだろう。
 最近、TVで漢方薬や生薬由来の○○等の宣伝が増えてきているように思う。漢方生薬を扱っている医者にとっては、知名度が上がり嬉しいことかもしれないが、懸念が残こる。
 あるコマーシャルで、下半身のむくみには当帰芍薬散と言っていた。確かに、水滞所見のある患者さんに処方することはあるが、市販の万人向けのエキス剤や錠剤は、生薬含有量が一定で、一人ひとりに即した分量・配合ではない。その結果、10人が薬局で購入して用法・用量を守って内服していても、7-8人には効果が出ないと思う。そして「やっぱり漢方は効かない」なんて言われてしまう。
 私は、現在提供されている西洋医学にも優れた対症療法があると考えているが、本質的な体質改善に於いては、生活指導と漢方(生薬と経絡治療)が絶対必要だと考えている。実際、開院以来の診療はのべ63500件を越え、その蓄積されている臨床経験から適応の可否の重要性を痛感している。漢方薬は副作用もあるし、用法・用量をちょっと間違えただけで、西洋医学の薬剤とは異なる特有な症状が出ることもある。
 世間は、特にメディアやメーカー、それと通販会社は○○ブームに乗りたがる。「皆さん、漢方薬は薬なんです。お茶ではありません。ちゃんと知識と経験のある医者からの処方でないと、危険です!」と大きな声で言いたい。特に、認可を下している厚労省の役人に理解して欲しい。
 それ故、漢方に興味を持たれている人達に向けて、当院では微力ながら(苦肉の策ですが)、一人でも多くの方に正しい漢方の選択をして欲しいと願い、この10月から「未病健診」というものをスタートさせることにしました。

(2018年9月10日)


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