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果物のメリット(ただし丸山所長は果物を食べません)
実りの秋、食欲の秋ですね。スーパーなどには秋の果物が沢山並んでいます。子供の頃、庭の木からもいだ柿を食べたことや、お弁当に入れてもらった梨やぶどうの美味しかったことを思い出します。
日々の診療では患者さんに食生活についてお聞きしていますが、毎日果物を食べているという方が結構いらして驚きます。と言うのも、丸山所長は果物をほとんど(全く?)食べないとお聞きし、自分もいつしか積極的には食べなくなったからです。
毎日果物を200g!!
2005年に厚生労働省と農林水産省により「食事バランスガイド」1が策定され、「何を」「どれだけ」食べたらよいかがイラストで示されています。これによると、成人の果物の1日摂取目標は200g。この数値は、諸外国の状況や生活習慣病リスクに関する文献等から設定されたものです。
上記の果物は100gの目安なので、毎日この2倍食べることが推奨されているのです。カロリーに関しては、バナナが約100kcal/100gで、それ以外は約50kcal/100gです。
毎日こんなに食べていいの?と思ってしまいますが、食事バランスガイドを遵守すると総死亡、循環器疾患死亡のリスクが低くなることが明らかになったという研究報告2もあります。特に循環器疾患のリスク低下との関連は、食事バランスガイドの副菜(野菜、きのこ、いも、海藻料理)および果物の遵守得点が高い人で顕著に認められました。
果物摂取による疾患リスク低下
国立がん研究センターは、いろいろな生活習慣とがん・脳卒中・心筋梗塞などの病気との関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命進延に役立てる研究を行っています3,4。
果物摂取に関する研究で、メリットを示す報告が多数ありました。
- 2008年:果物摂取量が多いグループほど、循環器疾患(心筋梗塞、脳卒中)のリスクが低下
- 2008年:野菜・果物の摂取量が多いグループで、食道がんのリスクが低下
- 2014年:女性で果物の摂取量が多いほど、分化型胃がんのリスクが低下
- 2015年:果物摂取で男性の肺がんリスクが減る可能性あり
- 2020年:フラボノイド(ポリフェニールの一種で、抗酸化作用、抗炎症作用あり)の豊富な果物、特に柑橘類の摂取量が多いグループでは、虚血性心疾患の発症リスクが低下
- 2021年:女性ではフラボノイドの豊富な果物(りんご、なし、柑橘類、いちご、ぶどう)の摂取量が多いグループで脳卒中の発症リスクが低下
- 2022年:果物の摂取量が多いグループでは全死亡率が低下
- 2022年:果物およびフラボノイドの豊富な果物の摂取量が多いグループで、うつ病のリスクが低下
- 2024年4月:全野菜・果物摂取量が認知症発症リスクの低下と関連あり
果物の栄養
果物はビタミンやミネラル、食物繊維の供給源となり、その他にも様々な機能性成分が含まれています。果物の色とも関係するポリフェノールやカロテノイドには、疾病予防に関係する抗酸化作用等があります。
カロテノイドの一種、β-クリプトキサンチンは温州ミカンに高濃度で含まれていますが、これに関連した大規模な栄養疫学調査があります。ミカンの生産地である静岡県の三ヶ日町における10年間にわたる調査で(三ヶ日町研究)、ミカンをよく食べ血中β-クリプトキサンチンレベルが高い人では、様々な生活習慣病(肝機能障害、2型糖尿病、脂質代謝異常症、動脈硬化症、骨粗鬆症)リスクが低いことが明らかになりました5,6。
このように健康維持や疾病予防のために、果物を摂取することはメリットばかりのように思えますが、丸山所長は何故果物を食べないのでしょうか?
次回のブログでは、果物に含まれる果糖(フルクトース)の害についてお知らせしたいと思います。
<参考>
- 「食事バランスガイド」について|厚生労働省 (https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou-syokuji.html)
- 食事バランスガイド遵守と死亡との関連について | 現在までの成果 | 多目的コホート研究 | 国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト (https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/3788.html)
- 多目的コホート研究(JPHC Study) | 国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト (https://epi.ncc.go.jp/jphc/)
- 科学的根拠に基づくがんリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究 | 国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト (https://epi.ncc.go.jp/can_prev/)
- 杉浦 実:β-クリプトキサンチンと生活習慣病リスクとの関連:疫学研究からの治験.オレオサイエンス2012;12(10):515~523
- 杉浦 実:国産柑橘類に多いβ-クリプトキサンチンの生体調節機能と機能性表示食品への展開.園芸学研究2023;22(1):1-10
宮下
2024年10月4日