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メノポハンドと漢方薬
メノポハンドとは
「メノポハンド」という言葉を聞いたことがありますか?更年期の女性に多く見られる手指の不調のことで、メノポーザルハンド(menopausal hand:更年期手)の略です。2022年に日本手外科学会によって命名されました。
「更年期」の定義は、女性の閉経前後5年ずつを合わせた10年間を言い、女性ホルモンであるエストロゲンの減少とともに様々な「更年期症状」が現れることがあります。ホットフラッシュや精神的イライラ等がよく知られていますが、関節痛やしびれも含まれています。エストロゲンは子宮や卵巣、乳腺等以外にも関節や腱鞘(=腱を包む鞘)の周りにある滑膜という組織にも作用し、エストロゲンが減少すると滑膜が腫れて(=滑膜炎)、関節痛や腱鞘炎を生じることが分かってきました1。
メノポハンドの症状と対処法
手のこわばりや手指の関節痛等がメノポハンドの初期症状です。進行すると以下のような手指の疾患を発症することもあります。
- ヘバーデン結節:手指の第1関節の痛み・変形
- ブシャール結節:手指の第2関節の痛み・変形
- 母指CM関節症:母指の付け根の関節の痛み・変形
- ばね指:手指の付け根の腱鞘炎で、痛みや、曲げ伸ばしでひっかかる現象が見られる
- 手根管症候群:母指~薬指(親指側半分)のしびれ、痛み
関節リウマチ等の膠原病でも同様の症状が認められることがあり、血液検査やレントゲン検査等で鑑別診断が必要になります。
メノポハンドの対処法としては、消炎鎮痛剤の内服や外用、ステロイド注射、装具やテーピングの他、エストロゲン減少に対するホルモン補充療法、サプリメント等があります。
私もメノポハンドに!
私自身の経験を紹介します。40代半ば頃から母指の関節痛やばね指の症状が現れ、痛みが強い時は湿布や塗り薬を使用していました。そして昨年1月、右示指の第2関節に今までになく強い痛みと腫れを生じ、徐々に示指全体がパンパンに腫れてしまったのです。
カラー治療と外用剤の使用で痛みや腫れは徐々に軽減しましたが、手指のこわばりはその後も続いていました。
メノポハンドに漢方薬を
関節症状が悪化したのが昨年の寒波以降だったため、昨年10月から冷えや関節痛に効果のある漢方薬、桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)を服用し始めました。
桂枝加朮附湯は鎮痛作用のある附子や桂皮、こわばりを緩和する芍薬、むくみを取る蒼朮、体を温める生姜などが配合されています。シナモン(=桂皮)にショウガ(=生姜)、甘味の強い甘草も入っており、美味しいシナモンティーのようです。これを数ヶ月飲み続け、今年の冬は手指の関節痛や腫れは生じず、外用剤を使うこともありませんでした。
桂枝加朮附湯による手指関節痛(ヘバーデン結節)治療の有用性について検討した文献もあり2、更年期~更年期以降の女性16例全例で痛みが消失~ほぼ消失し、有効治療となり得るとしています。
関節痛に用いられる漢方薬は桂枝加朮附湯の他にもあり、症状や体質(=証)に合わせて選択します(→漢方処方加減の実際:関節痛の漢方)。
参考
- 平瀬雄一: メノポハンド (Menopausal Hand, 更年期手). 臨床整形外科 2024; 59: 1452-1456.
- 大塚稔: 手指変形性関節症の治療における桂枝加朮附湯の有用性. 日東医誌 2021; 72: 239-243.
宮下
2025年3月28日